雷とともに来た!プリキュアV〜阪神JF

yakin512005-12-05

雨中の波乱劇を制したのは超大穴男だった――。2歳最強牝馬を決する「第57回阪神ジュベナイルフィリーズ」が4日、阪神競馬場で行われ、8番人気テイエムプリキュアが直線で力強く伸びて快勝。熊沢重文(37)は91年有馬記念ダイユウサク)以来のG1勝ち。3連単31万馬券を叩き出し、大穴騎手の存在感をアピールした。1番人気アルーリングボイスは道中の不利が響いて14着に敗れた。 【阪神ジュベナイルフィリーズ
 18頭が4コーナーに差し掛かった時だった。降りしきる雨の中、阪神競馬場に稲妻が走った。そして「ゴロゴロッ」と雷鳴がとどろいた。その瞬間だ。手応えを失いつつあったテイエムプリキュアが、熊沢の右ムチに反応した。まるで雷がゴーサインかのように、ぐっとハミをとり、馬群を割った。

 水を吸って急速に悪化した馬場に手を焼く馬が多い中、プリキュアだけが直線、力強く前へと伸びた。ゴール前は手綱を緩める余裕。決定的な1馬身半差だった。熊沢は何かを叫びながら左腕を突き上げ、薬指のシルバーリングにキスをした。

 「本当にうれしい。スパッと切れるタイプではないので、雨はマイナスではないと思っていたが…」。主戦も驚く、雨への適性だった。「乗り役に従順だが、並んだら前に出ようとする気持ちが強い。並んだら負けない自信があった」。2歳牝馬と思えぬ勝負根性が雨中の消耗戦で威力を発揮した。

 張り切るべき理由があった。10月23日、プリキュアに乗って、かえで賞を制したその日に和香子夫人(36)との婚姻届を出した。ゴール後の指輪へのキスは、最愛の夫人にささげたものだった。「素直な気持ちの表れ。この馬には、いい縁がある」。熊沢に心からの笑みがあふれた。

 五十嵐師は待望の重賞初勝利がG1。「ありがとう、ありがとう」。喜びの声はうわずっていた。「悪い馬場は苦にしないと思っていたので、恵みの雨だった。掲示板はあると思っていたが…すごい馬だ」。来春の目標は桜花賞だが、ステップ戦などは未定。「僕が興奮して舞い上がっているので、次のことがまだ考えられないんだ」。そんな理由も、ほほ笑ましくていい。

 熊沢といえばダイユウサク。91年有馬記念単勝1・7倍のメジロマックイーンを14番人気馬が差し切ってから、もう14年が経過した。「昔のことで忘れてしまった。ずいぶん時間がたったね」。久々にG1舞台で輝いた大穴男に歓喜のシャワーが、いつまでも降り注いでいた。(鈴木 正)

 ◆テイエムプリキュア 父パラダイスクリーク 母フェリアード(母の父ステートリードン)牝2歳 栗東・五十嵐厩舎所属 馬主・竹園正継氏 生産者・北海道新冠町タニグチ牧場 戦績3戦3勝 総収得賞金7860万3000円 重賞は初制覇。勝ちタイム1分37秒台、馬番(12)が制したのはスティンガー以来7年ぶり。8番人気は2年連続V。

 ≪名付け親はオーナー愛娘≫00年テイエムオーシャンで、このレース(当時は阪神3歳牝馬S)を制している竹園正継オーナーは、落ち着いた表情で表彰台に上がった。テイエムオペラオーでも知られる同オーナーは01年秋華賞テイエムオーシャン)以来となるG111勝目。当歳時のセリで、わずか250万円だった孝行娘が大仕事をやってのけた。「今まで買った馬の中で最も安かったが、一番うれしかった。男馬みたいで“この馬で桜花賞に行くぞ”と言ったんだ」と購入時のエピソードを明かした。馬名を決めたのはオーナーの愛娘。人気テレビアニメ「ふたりはプリキュア」からとった。

 ◇ふたりはプリキュア 日曜朝8時半からテレビ朝日系で放映。ローネ学院女子中等部のクラスメート、美墨なぎさ雪城ほのかの2人が、光の園から逃げてきた不思議な生き物、メップルとミップルに出会い、変身する能力を身につけて悪と戦う。幼稚園から小学校低学年の女の子に人気。

(写真)雨で悪化した馬場を力強く抜け出したテイエムプリキュア(左)


http://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2005/12/05/01.html